第9話「交響・イクサ・フィストオン」
2008年
バイオリン作りに失敗し続け、渡は悩み始める。そんな彼の為に、静香は有名なバイオリン修復の専門家大村を呼び寄せる。
渡の作品を失敗作だと見抜いた大村の力量を理解しつつ、渡は父親が作ったバイオリンと同じくらい凄いものを一人で作りたいと、大村の教えを拒む。
渡の考えに同調しつつ、大村は渡の父親が作ったバイオリンを見せてくれと頼む。ブラッディローズを目にした大村は渡に対し
「君はこれと同じものを作ろうとしてはいけません。君は君のバイオリンを作ればいいんです。君にしか作れないものを。」
と言い残して立ち去ろうとする。それを聞いた渡は、大村に対して教えを請い始める。
名器を世に残すという願望を抱きつつ、それを一人で叶えようとする渡の姿勢からは、生きることに対する主体性や拘りを感じさせるのですが、一方で目標として父親の作品を掲げており、どこかで見たことのない父親の存在に寄りかかっている節もある。大村から「同じものを作ってはいけない」と言われたのは、その甘えを突き付けられたのと同じことなのですが、かといってすぐに甘えを乗り越えることも出来ないということで、頼る相手を父親→大村に変えた感じ。
大村からバイオリン作りの技巧を教わる渡だが、静香が割った皿等の騒音雑音で大村は混乱し飛び出してしまう。
その頃、名護啓介は麻生恵の奢りで定食屋に居た。恵は名護からライダーシステム・イクサを借り、成果を挙げて正規のイクサ資格者になろうとしていたようだが、名護は「人にものを頼むところではない」とさりげなく定食屋をdisる。
嫌なヤツが自分が求める力を持っている以上、自分こそそれ以上に力に相応しい存在であることを証明したいと言う恵の意地が、名護に飯をおごるという形で表れていると。
店の外である男を見かけた名護は、食べてもいないのに「美味しかったですよ」と言い残し、男の行方を追う。路上ライブ中のバンドメンバーを襲撃する男を「連続暴行犯大村武夫」として止めるも、大村は蛙タイプのファンガイアに変身。逃走中にキバと戦うが、キバもまた彼の正体を知ってしまう。
渡からも逃げた大村は名護に追いつかれるが、名護はついに仮面ライダーイクサへと変身。大村が変身したファンガイアを倒さんと襲い掛かる。
1986年
第3話で嶋の口から語られた、犬に懐かれる音也の図。
所持したものが次々とファンガイアに襲われた名器ブラックスターを金の力で手に入れた素晴らしき青空の会だが、ゆりは自分に酔うかのようにブラックスターを弾き出すが、あまりの雑音に苦言を呈する音也。
「俺には聞こえる。そのバイオリンの悲鳴がな」
聞くに堪えない雑音を醸し出すゆりを、蛙ファンガイアが襲撃する。
そんな蛙ファンガイアにボコボコにされる音也だが、戦いのさ中次狼がガルルに変身する姿を目撃してしまう。
第10話「剣の舞・硝子のメロディ」
2008年
第2の師匠である大村の正体を知った渡は彼を庇うが、当然第1の師匠である名護の怒りを買ってしまう。
師匠1に嫌われた渡は、師匠2から話を聞き出す。大村は昔、ブラックスターというバイオリンを作ったが、持ち主が相応しくないと見るやその命を奪っていた。しかし、渡の父親の奏でる音楽のおかげで人の命を襲わなくなったと言う。
師匠2を失いたくない渡は、師匠1のファンガイア観について尋ねるが、師匠1は頑なにファンガイアは人類の天敵であり悪であるという主張を曲げようとはしない。
「何も、そんな風に決めつけなくたって」
「黙れ!貴様に何が分かる!俺は常に正しい!俺が間違うはずがない!」
名護からは否定されながら、それでも人を襲わないという大村の言葉を信じようとする渡だが、現実は彼を裏切る。建設現場の騒音に苦しんだ上に、名護から音也の音楽を聴くためのヘッドホンを破壊された大村が、暴走を始め作業員に襲い掛かったのだ。静止を求める渡の声も届かず、人を襲い続ける大村。渡はキバとして大村を葬ろうとするも、結局止めを刺せず見逃してしまう。
人生の師匠として大村に依存している渡は、大村が人間の世界で生きていけるよう望んでおり、だからこそ大村本人が人を襲い出し、自分からこの世界に存在できる資格を捨ててしまったことにどうしようもなさを感じてしまう。さりとて、依存している故に倒せないというのが悲しいところ。「人間は音楽」という恵論で渡の「人間」への親しみが増しているであろうというのもあるかも。
そして、暴走の原因を作った名護によって大村は葬られるのですが、大村自身に原因はあったとはいえ、追い込んでしまったきっかけを作ってしまった(あの暴走で絶対死人が出てるはず)のは、「俺が間違うはずはない!」というセリフへのカウンターともとれる展開です。
ところで、大村の人間を襲いたいという欲望は、人間のライフエナジーを食べたいという習性から来るものであるはずなのですが、暴行シーンしか目立ってなかった為、お話とアクション場面との齟齬が目立ちます(;^_^A
1986年
音也以外の人間は次狼の正体を知らない為、当然孤立する音也。
しかし、ブラックスターを手に入れ、尚且つ「種族の為に」ゆりを狙おうとする次狼を牽制したり、中々美味しい姿も増えてきました。
音也の温かい演奏に惚れこんだ大村は、音也が真のバイオリニストならば「いずれ名器を手にする」と伝え、改心を決意。音也の支援を受けて、ゆりたちから逃げきり、ブラックスターを封印して新たな生き方に臨もうとするが・・・。
いい加減さと軽薄さが強調されがちだった音也が、生死がかかった個人の訴えと向きあい、その言葉を信じるというのがちょっと新鮮。