しがない感想置き場

特撮番組とかアニメなどの感想を投稿します。

仮面ライダーアギト 第12話

 ・Y・ターゲットは赤ちゃん
被害者が遺した姓名判断の本から、奥さんが身ごもる子供がアンノウンに狙われると踏んだ氷川君。名推理として上の人達から褒められます。
正直、第1話第4話でターゲットとなった一家自体が全滅しているので「血縁関係者が狙われる」というイメージを視聴者に強調し損なった感が強いのですが、赤ちゃんまで狙う怪人の異常な執着が、強大な力を持ちながらも人間の中の何かに恐れを抱いているのではという疑問を抱かせ、視聴者の関心をぐいぐい釣っていきます。

 

・Y・現実の見方
あかつき号での事故以来、心を閉ざしてしまったという佐恵子さん。興味を示すのは兄が語った作り話と、それに基づく偽りの遺留物の引き上げ作業ということで、お兄さん曰く「幻想の中で生きている」とのこと。
そんな彼女のあり方に共感する涼に対し、翔一の方は納得がいかない様子。

 

翔一「幻想の中で心を保っているって、どうしてそんな必要があるんですか?」


涼「現実に耐えきれない人間もいる。」


翔一「どうしてですか?こんなに世界は綺麗なのに。ほら、空も雲も木も、花も虫も鳥も、家も草も水も」


涼「世界は、美しいだけじゃない!」


翔一「そうかな、そういうのって見方によるんじゃないですか?幻想の中で生きるなんて、もったいなさすぎますよ。」

 

佐恵子の生き方を巡る翔一と涼の台詞の応酬は、1クール一杯積み重ねてきた描写が活きて、かなり好きな場面。
翔一の方は前回の美杉先生の言葉で多少目の前の事象に目を向けるようになったとはいえ、苦しいことを目先の面白さでごまかそうとする癖は相変わらずなようで、そうした現実の一断面に頼り切る「見方」を是とし、世の中は「綺麗」と現実の世界を全肯定してしまうのは彼の危うさと同時に、その極端な振る舞いを実行できてしまう点で才能でもあるのですが、人の優しさに支えられてきた筈が、力の発現によって裏切られるという世界の美しさと醜さの落差で苦悩してきた涼が、佐恵子の代わりに、普通の人間として翔一のあり方に真っ向から反発するというのは、グッとくる場面です。
しかし、「現実を見なきゃいけない」ではなく「綺麗なものを楽しめないなんてもったいない」という翔一の快楽主義的あり方は、振る舞い自体に押しつけがましさこそあっても、翔一本人は純粋に佐恵子のことを思って気付いてほしいという心遣いから来ているということで、それ相応に重く、だからこそ、兄の方も翔一の言葉に何かを感じるような表情を見せるということで、脚本と演出が冴えています。

 

・Y・北條さんの妄執
氷川がG3装着員に再抜擢されたことで、G3としてかっこよく立ち回る野望が潰えた北條さんは、自分のみっともなさを払拭するために、アンノウン討伐を飛び越えてアギトを捕獲しようと暴走する始末。
冷静な判断力を欠いた北條さんに対し、市民を脅かす怪人と戦うアギトの邪魔はさせまいと、氷川君の鉄拳制裁が炸裂。
走行中のパトカーの上での戦闘シーンは見ごたえ抜群ですが、車の上で暴れられた上に、急ブレーキで停止となると、お腹の中の赤ちゃんの安否がどうしても気になってしまう所です。

 

・Y・「知っているか!」の人

精神病院(?)に入院中の人造人間に、元東京国初代皇帝によく似た人が面会に来ました。
受付で「津上翔一」と書きかけて「沢木哲也」と訂正する謎めいた描写が、個々の登場人物のドラマが色濃く展開した直後に挿入され、物語への関心を更に高めます。