・Y・パンチの効いた展開
翔一自身は倒れていた真魚パパを発見しただけで無関係でしたが、北條さんが集めた資料と真魚ちゃんの超能力で、アギトになった雪菜が真魚パパを殺したのでは、という疑いが極めて濃厚となり、作品としては犯人は翔一の姉=アギトとして結論付けられる様子。
これを受けて翔一は激しく動揺。前向きで明るい姉が殺人鬼へと変貌したこと、大切な人が大切な人の大切な人を殺したという現実が、自分が自分であること、自分に居場所があることに喜びを覚えてきた翔一を追い詰めていくのは当然で、これまでの描写の積み重ねが深刻さを強調します。
真魚パパの件で北條さんもアギトの力を危険視し、アギトとしての翔一を信じてきた真魚ちゃんも戸惑い始める一方で、翔一のアギトの力は激しく、アナアギやギルスと戦って生き延びたフクロウ怪人をただのパンチで仕留めるで程で、本来なら喜ばしい筈のヒーローの強さに負の印象がつき纏い、またヒーローを圧倒する敵の大ボスの行動にある種の尊さまでもが生まれてしまうという、倒錯した事態が凄い。
・Y・無力その1
アギトの力を奪われた木野さんですが、力を持った涼に逃走を促し、かつての選民思想はどこ吹く風。
最強を気取っていたらエクシードギルスに打ちのめされて自分の無力と心の弱さだけが残り、また翔一から過去に生きていることを指摘されたこともあり、己の挫折と突き付けられた正論が、浩二が言う所の「優しい木野さん」への変化を促している様子。
最も今の木野さんは、自分の弱さを認めた上で前に進んでいるのではなく、自分の弱さを認めて狂気から脱却してはいるけど、無力感から来る諦めに囚われている様子で、本質的な解決には至っていない状態でしょう。
今回ギルスの力を奪われた涼ですが、木野の変化に気づき、この状況下で人造人間に狙われた翔一を助けに行ったりと、基本的に美味しい役どころ。
・Y・無力その2
真魚パパの件で翔一から詰問される哲也。頑なに雪菜の「無罪」を主張するも、翔一の気は晴れません。
達観した物言いと共にアギトの味方として登場人物を導く一方で、人間に対してある種の諦めを抱いていた節のある哲也ですが、そんな彼では翔一の心は救えないというのは中々意味ありげな展開。