しがない感想置き場

特撮番組とかアニメなどの感想を投稿します。

仮面ライダーアギト 最終話

・Y・最強ナイフ

G3ユニットを小沢さんと共に乗っ取り返しし、強敵怪人二体に追い込まれピンチに陥った翔一のもとに駆け付ける氷川G3-X。「また戦いましょう!」と翔一に声をかける姿は燃えます。

負けず嫌いで不器用で、そんな氷川誠だからこそ、逃げずに戦い続けた。だからこそ、アギトでなくても「ただの人間だ!」と言い切って強敵相手に戦い抜ける。

シャイニングカリバーを破壊した剣を、肩のナイフで防いじゃうのはちょっと補正が強すぎる気がしなくもないけど(笑)

 

・Y・死なない人

涼に関しては、この最終5話は添え物的な位置づけで、正直これといった見せ場は少なかったのですが、なんだかんだで弱虫だけど、なんだかんだで意地の人ということで、最後まで生き残った感じ。

翔一とは違い成長してどうのこうのというタイプではないので、見せ場が限られるのは仕方がないのですが、やっぱり彼のピークは木野さん死亡回までかな。

 

・Y・かっこよすぎる変身

 

「人の未来が、お前の手の中にあるなら、俺が、俺が奪い返す!!」

「変身!!」

 

最終決戦でのシャイニングフォーム直接変身がかっこよすぎる。覚悟を決め、誰かの未来、自分の未来全てを守ろうとした翔一だからこそ、圧倒的な「力」への宣戦布告の言葉が非常に頼もしい。ついさっきまで怪人2体に追い詰められていたとはいえ、仲間の助けを受けて再び立ち上がり、受け入れた力の真髄=最強フォームを生身の状態から直接呼び起こすという「変身」の場面が劇的。

そこからの前期処刑用ソングからの快進撃は爽快感マックス。紋章が二つになった必殺キックは、アギトの力の進化を意味するのでしょう。

 

・Y・凸凹コンビ

クウガ」のように海外ロケではない様ですが、小沢さんと北條さんがロンドンで再会。

前回のアギトを巡った対立に関して触れ忘れましたが、ナルシズムな所も罪悪感に囚われる所も臆病な所も含めて北條さんはスタンダードな「ふつうの」人間(これでも)で、小沢さんは「天才」タイプの人なのですが、小沢さんは小沢さんでG3-Xの件があったからこそ、人の弱さと強さの両面を信じられるということで、天才タイプの人間の高圧的なもの言いではなく、凡人であり英雄である氷川誠との交流があったからこその台詞はやはり迫力がありました。

 

・Y・医大を目指し、勉強する浩二

脇役のお兄ちゃんが久しぶりに出てきて勉強しているだけのシーンで涙腺が崩壊しかけるのは、木野薫って奴のせいなんだ。

 

・Y・神様系

翔一のケリを食らい、沢木の説教で見守る路線にシフトした神様。

ライオンと鷹を倒し、自分にも蹴りを放ったアギトの力に焦っていた神様を、沢木の説得が宥めたということでしょうか。沢木は沢木でアレな人ではありますが、厳しくアギト達と向き合ってきた彼だからこそ、その言葉は神様にちょっと響いたという感じでしょうか。

 

・Y・君のままで変わればいい

翔一がレストラン「AGITΩ」を開店というオチ。

調理師学校に通い、美杉家で料理を作り、パン屋でバイトをし、その他諸々で翔一とみ説に関わってきた「料理」「食」に因んだ居場所を最終的に作り上げたというだけではなく、様々な人が訪れ、そこで食事をし、ひと時を過ごすと言う、自分の居場所が、誰かの居場所にもなり得るという所が、誰かの為に、自分の為に、居場所を守り続けて戦ってきた翔一の到達点として、これ以上なく合致。

アギトであることを受け入れたからこその店の名前であり、自分や可奈と同じ、人として生きるアギトの居場所として、という願いも込められているのでしょう。

最近ご無沙汰だった真魚ちゃんを初め、美杉家の面々が集まるそのラスト、私は非常に好きです。

 

 

劇中、しばしばアギトの力を「人間の可能性」として言い換えていましたが、アギトの力で道を踏み外した者が多々存在したように、本作における「可能性」は、ポジティブな意味だけではなく、「未知数なもの」「不可視なもの」という、不安や恐れを含めた、ネガティブな意味合いもまた同時に強いものでした。

本作は翔一の記憶の欠落から始まり、様々な「謎」をちりばめ、また窮地に落とされた人間の未来への不安、そして、個々人が持つ裏の顔といった、「見えないもの」への意識が非常に強く、その一方で、「見えないもの」を「無視」し、「見える」現在の幸せ「だけ」を見て、人生を楽しむ翔一の能天気且つポジティブな側面が強調され、それ故に翔一の異端=神聖っぷりが際立ったのですが、そんな翔一も、自らの欠落した記憶に肉迫する過程で、「見えないもの」への恐怖に怯える、俗っぷりを露わにしていきました。

本作における人間は、そんな目に見えないものに不安を抱き、或いは飲み込まれて自分の未来を自分で閉ざしてしまう弱さを持った存在として描かれ、だからこそ、未知の力である「アギト」を北條さんが「良い」可能性として肯定できなかったのですが、一方で、未知の力と戦い、自らの意志の力で以て、未だ見えない未来を自らの手で切り開く強さという意味での、ポジティブな可能性としてのあり様もまた示してきました。

そんな正と負双方の「可能性」と向き合うこと、自分の強さと弱さのどちらも受け入れ、力強く、時にあがきながら生きていく。王道ど真ん中のテーマ性が、多彩な登場人物によって織りなすダイナミズム溢れる群像劇によって、作品として昇華されていたと思います。

 

「人は、後悔しないように生きるべきだ。自分の思い通りに。自分の人生を狭くするのは他人じゃない。本当は自分自身なんだよ。」

「所詮人は、自分で自分を救わねばならない。君が君でいられるか、それを決めるのも、自分自身だ。」

 

登場人物が自分と向き合って必死に生き抜き、だからこそ誰かを守る為に戦えるヒーローになる。ヒーローものだからこそより一層、彼らの生き方が力強く、格好良く映える。

自らの未来に怯え、苦悩する他者を勇気づけるように、その眼前で「変身」し、人々の未来を奪おうとする存在と戦ってみせた津上翔一/仮面ライダーアギトは、紛れもなくヒーローそのものだったと思います。