しがない感想置き場

特撮番組とかアニメなどの感想を投稿します。

鳥人戦隊ジェットマン第17話、第18話

第17話「復活の女帝」

 

▼INUETSK

893脚本回で実家のような安心感。停電中のエレベーターという閉鎖空間の中でそれぞれが思い思いの言葉を口にする様は実に生き生きしており、特に凱は誇大的に、雷太は素朴に、自分の言葉で香への想いを言葉にする場面が印象的で、合流した途端喧嘩になるというアクティブな流れが実に楽しい。揉め事の火種である竜が諫め役という倒錯っぷりもまた面白い所です。

 

▼痛そう(こなみ)

香からは仲間を馬鹿にする最低野郎、雷太からは痴漢扱いと身内の評価が散々な凱ですが、第13話、第14話とは対照的に、女帝ジューザの攻撃から香を庇うことに成功。凱の皮膚を突き破って宝石が生える様は、大人目線だと造形物こそショボいのですが、身を震わせて絶叫する凱の姿もかけ合わさり中々の緊張感で、当時の子供達に大きなトラウマを植え付けたこと間違いなしって感じの描写。

 

 

第18話「凱、死す!」

※タイトル詐欺です。

 

▼ダメギ(大嘘)

凱「へ!まあそうマジになりなさんな!俺が死んでも・・・空は青い。地球は回る。」

(自分と同じ宝石病(?)の人間が消える様を思い出し)

凱「香・・・怖いんだ!本当はどうしようもなく・・・死にたくねえ・・・死にたくねええ!!」

激痛に悶え苦しみながらも、香の前では達観した態度を取り、孤高の自由人としての矜持を示そうとする凱。それでも痛みは容赦なく彼の心を揺さぶり、直前に観た光景と掛け合わさって「最悪」の結果を想起させ、何物にもとらわれない自由人の「本音」を吐露させる印象的な場面。若松さんの演技も迫力満点で、いつ見ても素晴らしいです。

「滅ぶんなら滅びゃいいさ。まあ俺としては、それまで十分に人生を楽しみたいね。」と、自らの生死を達観した目線で捉え、それ故に世の中に対しても斜に構えた態度で向き合うドライな性質を持つ一方で、「俺たちは戦士である前に人間だ!男と女だ!」「惚れた女1人守れねえとは、なんてザマだ!」と情熱的な言葉を吐く一面も併せ持つ「矛盾」を披露してきた凱ですが、自らの命の危機を前に恐怖を告白することで、それまでの「孤高」は己の弱さ、そして世の中にコミットしていきたいという素の部分を押し隠すベールとして強調し、結城凱という人間の生の部分を生き生きと映し出しました。

戦隊としての戦いに消極的なのも、「死にたくない」という本音を自覚することで、自分の内側にある恐怖や不安も同時に見つめてしまうことを恐れたからであり、だからこそ正義の戦士として戦い抜くことばかり考えている(と凱は思っている)竜を敵視する一方、彼の「強さ」を認めており(それ故に嫉妬心もある)、また「チーム内で彼に抵抗する自分」という構図を維持し続けることで、竜に反発しながら竜が押し付けるジェットマンとしての任務をこなすという矛盾した役回りを同時にこなしている。

つまり、凱にとって竜は、その好悪はともかく強くてかっこいい自分像を守る為に必要不可欠な存在であり、凱は彼に嫉妬し嫌悪すると同時に、ベッタリ甘えきっているというのが、彼の情けない部分です。

香に対する感情は、竜に憧れながらもまだ戦士としては未完成な存在ゆえに、近しさと同時に羨ましさもあるということで、自分の「強さ」を見せつける対象として、また一個の「強い女性」として魅力を確かに感じているということで、矛盾した自己を同時に満たすことが出来るという都合の良さも内包していると。

そんな凱ですが、なんと1人でジューザ(既に傷だらけ)を追い込むヒロイックな一面も見せつけ、生身の人間としてはこれ以上ない位どうしようもない一方で、戦士としての見せ場(相手も大分弱ってたけど)も用意されているというのがニクイです。

 

ラディガンに変身した方が「人間に戻って」の台詞が生きた気もするけど

前回いきなり登場したバイラムのボスこと女帝ジューザに謀反を企て、失敗して人間にされるラディゲ。ジューザって確かに偉そうだけど、それなりに忠誠を誓っていればそこそこ優しくしてくれそうなイメージなのですが、作中特に身内を虐待する場面も無いのに、抹殺対象になってしまう所が、ラディゲを初め、バイラムの人たちの情けなさを表現しているとも言えるでしょう。

記憶を失い、人間にされたラディゲが人間の少女とラブロマンスを繰り広げながらも、結局記憶を取り戻し、「愛」を「愚かしい感情」と切り捨て少女を殺す展開から、誰かを想ったり寄りかかったりする感情こそ弱さの表れと解釈しているようで、強い自己像を守る為に、ジューザに反逆してみたというのが実態かもしれません。

自分の弱さを認めず、自らの「強さ」を証明する為に他人を犠牲にし、その一方で敵わぬと知るや、たとえ敵であっても平気でその力を戦力として利用し、邪魔者を排斥するダブスタっぷり。それでいて「結果」を出しているところが、ラディゲの今尚戦隊史上屈指の外道として語られる所以かと。

 

強い自分のイメージを守ろうと粋がる一方で、身を挺して他者を庇い、弱い自分の本音を吐露した凱と、敗北をもものともせず、平気で他者を利用し、挙句抹殺してしまうラディゲの対比もハマり、改めて面白い女帝ジューザ編でした。