しがない感想置き場

特撮番組とかアニメなどの感想を投稿します。

暴太郎戦隊ドンブラザーズ ドン5話

ドン5話「たてこもったイヌ」

 

「幸せが分からないから他人を幸せにする」ということで、タロウは幸せが分からない人らしいです。

子供のころから完璧主義を押し付けていたタロウのあり様を考えると、元から「完全なるもの」「正しいもの」こそ幸せの形であると勘違いしていたのが原因ということなんでしょうかね。「幸せ」に至るプロセス自体への視野が狭く、その押しつけで嫌気がさした人たちが周りから去り、寂しい不幸な思い出ばかりが積み重なる。だから幸せというものが縁遠くなる。でもタロウ自身は完璧主義こそ幸せへのプロセスだと固く思い込んでいる。

31年前に井上敏樹が書いた「ジェットマン」の天堂竜も、リエを失ったトラウマで人間的な生活ではなく時に個人を否定する大義に殉じることこそ幸せであるというある種の完璧主義に囚われた人間でしたが、タロウの場合はその出自からして人間離れした所があります。

竜は生身の人間がなんとかして大義を重んじる根っからのヒーローとして自分を意識的に錯覚させようとしていたのですが、タロウはそもそも人間的な感情が分からないので、大義なるものに本心から寄りかかっている状態なのを考えると、タロウはある意味生まれながらのヒーローなのかもしれません。最も、それは利他的な目的による行為ではなく、「幸せ」を知りたいという自己充足の視点から来る振る舞いなので、人間的な感覚の欠落が生じたことで、それを埋めるためにヒーローであることを余儀なくされてしまった者というのがタロウの実態というか。

井上敏樹の作品は「自分を救うことが出来て、初めて他人も救える」という、自分との戦い的な主題が目を引きますが、タロウは果たして本当のヒーローになれるのか。

 

はるか「漫画に必要な人生経験を積むために犯罪者の人質になりたい!」とか言って、訪れた雉野まで巻き込む形で人質であり続けようとするキチガイというかトンチキっぷり。いざとなったら変身出来るという強みはありますけど、自分の夢たる「漫画」が関わってくると我を忘れてしまうのは、我欲に対する執念の強さの表れでもあり危うさでもあります。タロウの「ここにいる人全員身勝手」という言葉の8割は彼女の為に向けられた言葉に聞えます。

正しい正しくないよりもとにかくまずは「自分のしたいこと」を優先するはるか。押しつけがましい所はタロウと似通っているのですが、彼女の場合は「自分が幸せになる道筋」を掴んでおり、彼女の視点でドラマが進むのも当然と言えるでしょう。

漫画家を目指すきっかけとか、漫画に対する思い入れを掘り下げるエピソードも欲しいなあと思います。

 

雉野さん優しいなあ。逃げ出そうと思えばタロウが犬塚を連れまわしている間にいくらでも逃げ出せたわけだけど、はるかのことを心配して逃げ出さなかったわけでしなあ。弁償覚悟とはいえ荷物を駄目にした逃走犯と漫画キチガイと俳句キチガイはともかく、この人は「自分の事ばかり」というのは酷な気もする。まあ、度外視されてた可能性もあるけど。

 

犬塚は逃げる為なら躊躇しないという意味で身勝手ではありますが、それでもキチガイ度は他より大分低め。公式サイトのキャラ紹介文だけ読んだらクッソ悪い人に見えるけど、実際は異常者度で言ったら他のキャラのがトんですわけだしねえ。

サングラス自動転送なのね。この辺の思い切りの良さというか、捻りの無さは良くも悪くも敏樹っぽい。

 

雉野の奥さんと犬塚の恋人(?)の顔が似てるような似てないような。「ゴウライガン」のリンを思い出しちゃうなあ。名前が違うだけあっちより根が深そ。

 

地味に良かったのが、盗作疑惑が掛かった作家の作品を、それでも目を通してあげる編集担当の面倒見の良さ。この作品、キチガイや当たりの強い人は多いけど、なんだかんだで根は良い人が殆どな気がします。少なくとも、横の仮面ライダーの登場人物の百倍は人間的にまともだと思います。あっちはもう、ツッコむだけ野暮なのかもしれない・・・。