しがない感想置き場

特撮番組とかアニメなどの感想を投稿します。

リコリコ視聴記録②

前回

 

リコリス・リコイス」を8話から13話まで観ました。

これで全話観たことになるので、皆大好き「総括」って奴を始めたいと思います。

 

の方でもある程度仄めかしましたが、この作品についてはエンタメとして楽しむというよりは、蟻とにらめっこしていた方が未だ有意義に思えてくるような虚無感と戦いながら、1話1話を文字通り一生懸命観たというのが本音です。

キャラ設定を頑張って紹介しているけど、その殆どがダラダラとした「説明」でしかなく、冬の札幌並みに寒いギャグと陳腐な掛け合いを繰り返す催眠効果抜群の人物描写に、メリもハリも無くひたすら弛んだシリーズ構成、表面的なリアルっぽさが鼻につくだけのハードボイルド要素等、死ぬほど退屈な作品としてのパフォーマンスをいかんなく発揮していたと思います。高い金を出してBlu-rayソフトを買ったり、ましてや他人に勧めるなんてのは、余程の不埒者じゃないと出来ない所業だと思いますが、Blu-rayソフトの売り上げを見ると、アニメオタの変態っぷりに戦慄するばかりです。

 

ただ、全話通して観たことで、良い所も観えてきたので、そこも含めて主だった所を書いてみます。殴るだけの総括ならサヨクでも出来るからね。

 

〇私はここで死にそうになりましたポイント

  • たきな関連全て。そもそものDAに執着している子という大前提からして掘り下げが足りな過ぎて、設定上では落伍者同然の立場になって自暴自棄になっていた彼女に前を向かせた千束の存在の重みも伝わらないので、彼女が千束の為に何か行動するたびにうすら寒い気持ちになるという、イタサ全開の事象については、一向に改善されることはありませんでした。そりの合わない相棒のひととなりに触れるにつれて、段々自分の価値観に変化が生じ、遂にはその人の為に本来の立場をかなぐり捨てて駆け付け、その気持ち故に当人の意思を無視してでも怒り暴走する様は、王道故に巧く描けば脂がたっぷりのった名場面になる筈が、その実態は空疎な人物造形によって骨にちょっと肉片がこびりついているだけで、齧っているだけで惨めな気持ちになっていくような、そんな残念極まりないへっぽこシーンの連続になってしまった気がします。第9話、最後のプライベートの時間でEDと同時に臨んでいた降雪が起きるシーン何て、ちゃんと書いてたら作画と演出の効果も相まってびえんびえん泣いてたと思うのですが、「雪なんていつでも降るわ」という冷めたツッコミが精一杯で、第12話の「心臓が逃げる」なんて突飛な台詞も、描きようによってはボロ雑巾のように泣いていたこと必至な場面になったものを、「脚本家が自分を山口貴由か何かだと勘違いしているんじゃないか」と白けた疑念を抱いてしまうのが関の山でした。可愛いJK風のおにゃのこがきゃっきゃして、時折理不尽に翻弄され、時にすれ違いを経ながらも一緒に乗り越えていく様を観ながら、「あわよくば間に挟まれようとして、当然のように踏まれてみたいんじゃ。二人分の体重が乗ったローファーのソールの感触がたまらないんじゃあ。」と、言の葉に乗せようものなら社会的地位崩壊必至なドM妄想で涎を垂らしながら作品に没入させることが、この作品の肝だと思っていたのですが、初動がヘボい上にそのフォローもさしてなされないので、千束に対して無条件に優しいだけの都合の良い女にたきなが魔改造されている感じで、百合とニリンソウの中間みたいなビミョーな立ち位置で終わってしまったのが残念極まりないです。

 

  • 存在感なんて欠片も無い上に、出てきたら出てきたで死ぬほどあっぱらぱーな一般人。作中テロリストの「世界は嘘をゴリ押しされている」という如何にもな発言が飛び出ますが、一般人が現在の平和をどう捉えているかなんて欠片も描かれないのでなんとも言いようがありません。勿論リコリスもしくじることはあるでしょうし、全く犯罪が生じていないなんてことはないでしょうけど、テロリストの発言や行動に説得力を持たせるなら、それなりに市井の人々の反応も描くべきだと思います。まあ百歩譲ってそれは良いとしても、銃を渡された途端、リコリスを見かけたら即発砲しちゃうおじさんとかなんなんでしょうね。挙句、一連の争乱が実はテレビのやらせでしたみたいな隠ぺい工作で納得しちゃう奴らまで出てきたりと、登場するパンピーの全てが五十嵐一輝級のクルクルパーとしか思えませんでした。嫌すぎるぜこんな日本。

 

  • うさんくさすぎるDA。正式名称は忘れたけど、なんか昔からある巨大裏組織みたいな触れ込みですが、ずっと頑張って組織を運営していた割に、ここ最近になって平和になりました犯罪が減りましたみたいな感じなのがどうも嘘くせえです。電波塔テロなんかも起きてた訳でしょ。それ以前はどうしてたんだよおお。

 

  • なんかリアルっぽいけど、それだけに鬱陶しい緒描写の数々。実在の景観や地名を出して、リアルな東京を演出してみたり、やりとりやガジェットやアクションなんかもシリアスなスパイアクションもののそれを意識してる感じで、ぱっと見で擽るものはあるのですが、嘘と真実というテーマ性も関係してか、ゴム弾不殺等どことなくそれらをメタ的に演出するような仕掛けとか、微妙にシリアスに徹しきれないふにゃけた空気を醸し出しており、ぱっと見のリアリティが却って夾雑物と化している印象が強かったです。この辺は多分に好き嫌いの要素が入ってくる所ですが、脚本がキャラをそこまで深堀出来ていた訳でもなく、物語独自のおいしさとして昇華しきれなかった気もします。

 

  • 後、「日本は嘘に塗れてる!」ってそれっぽい日本批判を繰り出すテロリストなんかも、クサくて仕方が無かったです。前述のように劇中人物のその辺りに対する反応が淡泊なのもあり、話を盛り上げる上で効果的に機能するどころか、「よーし、賢くて何でも分かってる僕ちゃんが、愚民国家日本の実態を斬ってやるぞお!」という、作り手のド荒い鼻息を浴びてしまったような錯覚を覚える位は、鬱陶しいことこの上なかったです。「マキャベリズム」とか出てきた時点で、鼻から目玉が出そうになったもんなあ。これに限らず、憂国だろうと反日だろうとポリコレだろうとフェミだろうと、そういうのはエンタメとしての節度と良識を備えた上でやってくれと願わずにはいられません・・。

 

〇私はここで命をつなぎましたポイント

  • ほとんどの物を犠牲にして尺を取っただけあって、千束の物語自体は手堅くまとまっていたかと思います。纏まっていたと言っても、彼女を取り巻く関係の描写がスカスカなのもあって、魅力の方は大分半減した感はありますがね。不殺主義を貫いてきた千束ですが、元々彼女が不殺を志したのはリコリス入隊直後からという訳でもなく、アラン機関の人から命を救ってもらったからという外部からの介入が原因なので、「病に蝕まれることで人の命の尊さが分かる」とか彼女自身の経験から培った悟りとか矜持ではなく、自分を救ってくれた人間に報いなきゃいけないという使命感であり、言って見れば彼女が自分で選択していた筈の「不殺」というのも、結局は押しつけの役割でしかなかったわけで。そんな千束が、遺された僅かな人生の彩りを共有した「相棒」を守るために、お仕着せの「不殺」ではなく、彼女の真意として「殺意」の方を選んだというのは、再三強調されていた「嘘と真実」「バランス」という言葉ともリンクしていたかと思います。これは他人の期待に応える為に自分を犠牲にしようとするのを善しとしないとたきなに言い放った千束らしい行動でもあり、真に大事な物を守る為に、真実が混じった嘘を捨てる痛みを背負うこと、それが自分が自分である為のバランスをとることってことかなと。嘘と真実を分けたがるテロリストと戦うのは、真実と向き合いながらも、嘘の重さもまた背負い続けてきた千束とたきなしかいないということなのかもしれませんし。これでたきなの掘り下げがしっかりできていたら、ちゃーーんと五体満足で視聴を終えられたんじゃないかなあ。紛いなりにも、たきなと千束の交流自体は、イベントが諸々積み重なっていた訳ですしね。

 

  • キャラデザ。これは前回も書きましたが、素直に可愛かったです。デザインで見たらたきななんて弩ストライクも良い所で、彼女の太ももが露出する場面とか、強面の人を踏んづけたりするところとか、本編の描写があんななのに素直にビビンときたもんです。キャラ描写と言う点なら、千束なんかは優遇されていたのもあって、第10話の晴れ着姿は中々に絵になっていたんじゃないかと思います。

 

  • EDは良かったと思います。歌手のやや投げやり風な歌い方は正直「うへぇ」ですが、本編の終了間際に流れるドンブラ風味な使い方も相まって、本編がアレでもそれなりに完成したような錯覚を覚えてしまう位には、哀愁+爽やかさめいたものを感じて良かったんじゃないかと思います。

 

とまあ、ボロカスに貶したり、部分的に褒めたりしてみましたが、本音の所では「ああ、こうしたらよかったのに」とか「もっとこうなんというか」みたいな、ポテンシャルがある故に不出来な部分がもどかしくなってしまうみたいな、率直な残念さが気持ちとしては大きいです。

嫌悪感と倦怠感MAXで、文句の百や千位言ってやろうかという気持ちにさせる一方で、所々に光るものがあるから、箸にも棒にもかからない産廃として貶し倒すのも惜しいって感じで、こういう作品が一番自分の中で立ち位置が難しいなあと思う所です。