しがない感想置き場

特撮番組とかアニメなどの感想を投稿します。

20周年なので「スクライド」を観返す⑥

第7話「橘あすか」

  • 「過去なんか背負わねえ!」と幼少時代の記憶を回想しながら叫ぶ夢の中のカズ君。アルター化した手を見てドン引くようなショタカズ君の表情が印象的。第4話に続き今回も「迷ったら負け」なカズ君の生き方がクローズアップされましたが、そんな前向きさの裏返しとして、辛い現実(過去)から目を背けようとする弱腰も少なからず隠れているのかと感じられる場面です。「人は違って当たり前」と型にはまった生き方を是とせず、一般社会では迫害の原因にしかならない自らのアルター能力を誇ってみせ、一方で他者の居場所に踏み込むことを善しとしない考え方は、ロストグラウンドの過酷な環境下でアルター使いであるが故の葛藤を抱きながら生きてきた幼少期の心の傷への「反逆」という意味合いも強いのかもしれません。

 

  • 過去の体験から現状に依存する橘君曰く「嘆きも悲しみも無く、ただ前を向いているだけの愚かしいこの男」と酷い言われようですが、豪快に過去を振り切る思いっきりの良さは、彼から見れば羨ましいの一言でしょう。なんだかんだでカズ君と仲良くなった感のある橘君ですが、「皆幸せになるべき!」と主張しながら、カズ君にホーリー部隊の「侵攻」について問われて絶句してみたりと、過去の経験からあれこれ思う所はあっても、現状に対して自分なりに考えを巡らせて答えをだそうという「主体性」の欠如を垣間見せます。自分の考えに凝り固まり気味なカズ君に対して、冷静な状況判断を下す一面を見せる反面、それ自体が結局は自らの弱気をごまかす「建前」でしかないということで、カズ君にノーを突き付けられるのは、劉鳳と、正妻こと君島君位といった感じ。

 

  • カズ君にお金を渡して、あやせさんらの救出を「依頼」する君島君。「友達付き合い」ではなく、自分自身が全う出来なかった危険な役割だからこそ、あくまでも「仕事」として頼むし、本当に救いたいからこそお金を渡すというのが、前回カズ君からピンハネを疑われていたのもあって、君島君の誠意として印象深い場面。巧いなあ。

 

第8話「最悪の脚本(マッド・スト)」

  • 負傷した君島君(正妻)を介抱するかなみちゃん(愛人)。うーん背徳感。

 

  • ホーリーに潜入したカズ君の前に現れるクーガー。色々あったみたいだけど、なんだかんだで仲の良い兄弟って感じのやりとりが微笑ましい。

 

  • 脚本(比喩じゃなくてまんま台本)で他人の思考を操作するホーリー隊員・雲慶は、ドラマCDによるとTSK脚本の信者のようで。アニメキャラから慕われたり、食事会にCOATファミリーの1人が参加したなんて噂も立ったりと、つくづく都市伝説みたいな御仁ですね。

 

  • で、書いてる脚本はそんじょそこらのなろう系アニメもドン引くような主人公様マンセーマンセーマンセーごらんあっちからもこっちからもかわいくてキレーな女の子が寄って来るヨおまけに優しい先輩・同僚が懇切丁寧にお仕事を教えてくれて「カズ君はほんとの天才だってばよ」と勝手に高評価までしてくれて君の人生君が何もしなくてももうバラ色だねだから人並みの脳みそを捨て去って今度こそ猿へと退化しちゃいなさいウキキキキという、観てるこっちの脳みそまで粉々に破壊するようなシドイ脚本ですが、カズ君から見事に「つまんねえ」とダメ出しされるというオチ。最も、あやせさん達救出失敗という鬱ENDを「改定稿」とはいえ投入し、上げて落とすやり方は確かにあの人の作風です。

 

  • 前回つまんねと切り捨てた市街の「華やか」な生活に浸ってしまうカズ君。前回ちらっと出てきた過去の場面を振り返ると、強気でいながらもどこかでそういう生活を送る人々への「嫉妬」はあったのでしょう。それでもカズ君なりにそれまで荒野に見出してきた「華やかさ」と照らし合わせて、違和感を感じてしまったのも事実で、それ故に雲慶の能力を脱することが出来たと。劉鳳は感心してましたが、アルターの力を覆す精神力の勝利というよりは、単純に「つまんねえ」という気持ちが芽生えたが故の突破という感じ。