しがない感想置き場

特撮番組とかアニメなどの感想を投稿します。

鳥人戦隊ジェットマン 第21話、第22話

第21話「歩くゴミ」

▼人が〇〇のようだ

ゴミの次元獣の登場回ということで一見まんまなタイトルですが、バイラムの皆さん並みに人間の悪意が強調される作品内容故に、通して観ると中々意味深

 

▼くさい(直球)

ゴミに出されたアコのぬいぐるみが次元獣となった、プータンことゴミジゲン。アコをママと呼んで甘えたりと、無邪気でかわいらしいキャラづけが特徴的ですが、一方で不潔な体で平気で他人に近づくデリカシーの無さや、不法投棄業者に対してすぐに手を出す攻撃性を併せ持ち、またそれらに無自覚であるという、成長過程故の社会性の希薄さも表現されており、良い意味でも悪い意味でも「子供っぽい」ゴミジゲンのキャラクターがドラマの展開に活かされたのは、好感度の高い所です。

アコがいようと見境なく暴れる辺り、純粋な絶望感ではなくマリアの超能力も多分に影響しているものと思われますが、それなら抹殺する前に洗脳しとけよとも思う所で。ある程度相手のメンタリティに動揺が無いと効果が無いのか?

 

▼左手はキュウリ?

プータンを殺したマリアにキレるアコですが、個人的にはアコ→プータンの気持ちは今一つ映えなかったところ。

プータンの正体に気づきながらも臭いで敬遠してるし、お情けで助けたらお金儲けも出来て宿も出来て厄介払いが出来たみたいな都合の良さからプータンに気を良くしたようにしか見えず、プータン→アコに対し、アコ→プータンはどうにも薄い感じ。

 

 

第22話「爆発する恋」

 

▼くつろぎタイム

凱「ジャズはお前には似合わねえ。」

ジャズというのは「解放」とか「自由」の象徴として語られがちですが、個人としての幸せを他所に、正義のヒーローとしての責務の事ばかり考える竜の生き方は凱から見れば「不自由」(故にそれに耐え抜く竜の強さもまた一方で認めている)であり、しかし事実は、リエの死によって個人の幸せを失った竜にとって、戦士として他者に尽くすその生き方こそが代替であるという、なんとも皮肉な状況で、それを凱が知らない故に、すれ違いは留まることを知らずといった感じ。

リエを失った竜は彼個人のアイデンティティの殆どを喪失した状態なのですが、唯一残った「正義の戦士」としての性質に、長官から与えられたジェットマンとしての「大義」と「力」が加わったことで、竜の中で「ジェットマンの使命」が大きく強調され(恋人を喪うという強烈な喪失体験も大きく作用している筈)、その誇張されたあり様故に、必然的に生き甲斐や遣り甲斐といったポジティブな意味合いも生まれ、それがすぐにでも壊れそうな竜のメンタルを支えている状態で、戦士であり続けることで現実から逃げているという「弱さ」が竜の実態ですが、表向きは戦士として誰よりも溌剌且つ力強く振舞うがゆえに、その弱さが周囲から巧く隠されている(当然自分にとっても)という有様。凱とのやりとりでリエを失った悲しみを思い出しながらも、「バイラムによって命を落としたが、今でも一緒に戦っている」と語り、クロスチェンジャーの裏にまでリエの写真を張り付けてみたりと、最愛の人の犠牲を敢えて意識し、尚も多くの人々を苦しめようとする巨悪と戦う正義のヒーローロマンに取り込むことで、己の使命をより戯画的なものに昇華させ、彼女への未練をごまかそうとしているのが非常に痛々しい。

問題は、その「リエ」が「マリア」として生きているんじゃないかという可能性がありるということで、リエを思う心をごまかすために、リエの犠牲を組み込んだヒーロー道の半ばに、再び彼女が敵として立ちはだかった場合、竜の心は持つのだろうかと不穏な空気が否応なく流れ、そんな視聴者の気持ちを察したように、セミマルにご執心なラディゲと、そんな彼に負けじと打倒ジェットマンに燃えるマリアの絡みも盛り込まれ、改めて実家のような安心感。

 

▼DORONUMA

泥沼展開とはよく言いますが、本当に泥沼の中で殴り合うドラマも中々ないと思う所。

亡き恋人の想いを背負って地球を守るヒーローのロマンスの中で陶酔したい竜は、香の想いを受け入れられず、さりとて戦士としての成果を果たすためにはジェットマンを維持しなければいけないので、内心ではクッソウザイ香を、彼女を慕っている凱に半ば強引に押し付けようと言う破廉恥っぷり。竜はリエと言う恋人がいた以上、男と女の気持ちと言うものにけして無頓着な筈はないわけで、それでも尚、香から自分に贈られたジャズコンサートのチケットを平気な顔で凱に譲渡する姿は、単に無神経というよりは、半ば確信犯的に凱を利用しようたとえ彼の気持ちを踏みにじってでも・・・という悪意めいた意図があるからで、そんなエゴをごまかすように心の中で「うまくやれよ凱」とエールを送ったり、「俺だってお前たちの事を思って」と怒る凱に尚も優しい自分アピールを続ける面の顔の厚さで、そんな竜を指して「いい子ぶりっこ」となじる凱は非常に好感度たかし君。

まぁ、凱は凱で竜へのコンプレックスを解消できない苛立ちも手伝っているので、約束の場に来なかった竜に涙する香の気持ちを汲んだというだけではなく、自分では竜の代わりにならなかったという、香を通して竜より劣った自らの情けなさを見せつけられた気持ちになって激昂していると言う所で、それが仲裁に入った雷太に対する怒りにもつながるという泥沼っぷり。

雷太は雷太で、香を思い遣るが故に竜への恋の成就を応援し、恋敵である凱を痴漢扱いし且つ香と似合わないと明言するので、凱でなくても雷太の「本心」は丸わかりであり、なのに香にアプローチをかけない彼の引いた姿勢が、竜や香と向き合って傷ついた凱から見れば、嫌悪の対象に上るのは当然と言うことで、コンプレックスと欠落から来るエゴのぶつけ合いが鮮烈で、それでいて、そのもつれあいの根っこには、「戦隊」としてのあり様も大きく関わっているということで、改めて濃密な作品です。凄いなあ。