しがない感想置き場

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暴太郎戦隊ドンブラザーズの登場人物あれこれ①

遅くなりましたが「暴太郎戦隊ドンブラザーズ」のまとめとなります。

最終2話の感想がかなりいい加減なまま終わってしまったのもあり、ここらでまとまったものを書きたいなと思っていたのですが、如何せん評論として体系的にまとめ上げる程の文才も時間も無いので、この作品の登場人物ってこんな感じだったよねという紹介文として書き連ねることにしました。

他人様に見せるレビュー文というよりは、自分用の備忘録的な性格が強めに出ているチラ裏企画となり果てていますが、「これを書いた香具師はこの作品を少なからず楽しんで観ていたんだな」というクッソどうでもいい情報が伝わればいいのかなと思い、公開としてみました。

 

※分量が多いので、複数回に分けて投稿していきます。Vシネ上映間近なので終わった後で改めて書き直せばという向きもありますが、一応あっちは続編の立ち位置になりますので、あくまでも別個ということで。

 

桃井タロウ/ドンモモタロウ

主人公。嘘をつこうとすると一時的に仮死状態に陥る。

普段は沈着な人間性が、ドンモモタロウに変身すると何もない所でゲラゲラ笑いだす異常者に変わるのですが、その理由はついぞ明かされず。

(芝居を除いて)あらゆる物事に関して神がかり的な才能を持つ為、却って自分を表現するに足る「特技」を実感出来ず、「誰よりもできる」という「ナンバーワン」としての唯一性を固持しながら生きてきた。

アイデンティティの欠落故に幸せのなんたるが分からないので、他人を幸せにすることでそれを知ろうとするも、万能故に誤魔化しながら生きる術を持たない純真さから、正道と完璧を追及し人々から煙たがれる、「神」故の孤独と空疎を抱えた男として描かれる。

己の「欠落」に自覚的で、人間達との間に横たわる溝に苦悩しつつも、偽りがもたらす幸福の存在と、自分自身の思わぬ弱さ、そして自分と共に戦い時に支えようとするお供達の存在に理解を示していき、彼らとの繋がりの中で自分の存在を自覚していったのは良かった部分。

最終回、ドンブラザーズが「完成」し役割を終えてからは、その過程で紡いだ絆を断ち切るかのように記憶が薄れ、皆の元を去っていくという展開が挿入。万能の神がその神力で以て普通の人々と必要以上に関わることの不自然さ故に、現世のしがらみを断って何処ともなく消えていくというのは頷ける所で、神様というのは万能故にその存在そのものがおぼろげであるというタロウの孤高をより強調する流れとして、ぽっと出の設定の割に腑に落ちてしまうというのはちょっとスゴイ。

(みほを失うことで崩れた心の均衡を保ち直す為、意図的な「リセット」を行った雉野に対し、タロウの場合は己の意思ではなく外的な要因からそれが発動してしまうというのも対比と言えるでしょう。)

そんなタロウが、記憶の剥落を前にお供達の想いを知ろうとし、記憶が消えてからも自分の為に集まってくれたお供達を落胆させまいと、労いと励ましの言葉をかけようとするシーンは涙腺を揺さぶる何かがありました。

その後、はるかの漫画を読み、一時的にドンモモタロウとして復活する件は、桃井タロウないしドンモモタロウというキャラクターの集大成ともいえる場面でしょう。漫画を通じて自分が辿ってきた人生を辿ることで、記憶は失っても縁を紡いだことに変わりはない。自分と共に歩んできた「誰か」との、酸いも甘いも含んだ交流が、誰でもない他ならぬ自分自身がそこにいたという事を教えてくれる。ドン49話の感想でも書きましたが、桃井タロウという孤高故に唯一無二の存在として位置付けられてしまったが故に、その存在の軸をどこに見出せば良いのか分からない男が、他者との交わりの中によってそれを見出し、自分自身を認めることができる「オンリーワン」の存在として、名実ともにようやく完成したんじゃないかと思います。

劇場版を皮切りにギャグネタとして消費されてきた感のある戦隊名乗りも、他者の中で確かに存在していた自分を誇るように高らかに己が名を呼びあげる、真の意味での自己肯定の儀式としての意味が付与されたのは、最後の最後で見せてくれた本作の戦隊シリーズらしい魅せ場」だったかと思います。

 

鬼頭はるか/オニシスター

漫画家志望の女子高生。元カレが行方不明だが、その理由はついぞ明かされず。

やたら前向きで前のめり。自分可愛さに我欲に溺れたり、将又信念や正義感を貫徹しようと猪突猛進的に突っ走ろうとする勇猛さを併せ持つ少女。良くも悪くも視野が狭い。

当初こそタロウの馴れ馴れしさに辟易していたものの、一心不乱に使命を果たそうとする彼の強さと素朴さに何かを感じたのか、一度漫画家を諦めた後は、戦士であり続ける為に彼に縋っていた節を垣間見せ、危うさと可愛げの微妙な所で踏ん張っていた様子。

著作に感銘を受けたソノザからの依頼とライバル椎名ナオキとの漫画勝負がきっかけで、押さえていた漫画熱が再び燃え上る。戦士としての生き方に従事する為に漫画を封印してきた節があるはるかが、熱烈なファンのダメ出しと期待と、強烈な実力を持ったライバルの二者に押される形で、ドンブラザーズとしての役目を捨てて自分の夢に逃げるのでも、自分の夢を無きものとしてドンブラザーズを受け入れるのでもなく、使命にも夢にも全力で挑むという真の意味での前向きさを取り戻したのは素晴らしかった所。

個人的には彼女なりの漫画に対する思い入れももう少し掘り下げて欲しかった所。一時的に後任を担当した真理菜の写真に対する情熱にスポットが当たっていただけに、掘り下げの薄さはどうしても気になりました。それでも、最後は「ヘンな人ばかりで笑える」と、ドンブラメンバー(おそらくヒトツ鬼も含めて)を総括してみたりと、当事者的な視点を超えたイチ作家として人間や人生を俯瞰して見つめる姿勢が備わっているのかと思うと、やっぱり彼女は何を差し置いても漫画家だったんだなあと思わせる部分。タロウが「神」という隔絶した立場から普通の人を見ていたとしたら、はるかもまた「作家」として一歩引いた所から普通の人を見ていたのかと思うと、本作の第2の主人公として物語を牽引してきたのも頷ける所。

 

猿原真一/サルブラザー

近隣住民の相談役として一定のステータスを得ている無職。わびさびを重んじ、物事に執着することを良しとしない。執着と欲望の象徴である「お金」については一たび触れば火傷する程苦手としているが、その理由はついぞ明かされず。

何物にも拘泥せず、欲から解放されているように見えるのは、結局のところ自分を慕ってくれる人が沢山居り、お礼として度々貢物を献上するという生活スタイルが染みついている故に、我欲を自覚する機会が少ないというだけで、自分を低く見積もる発言を根に持ってタロウやソノザ達に反発したり、大臣賞受賞を間近に控えた際は上機嫌だったりと、なんやかんやで俗人的な性質が残っているお方。

それでも、ソノイによってはるか雉野と共にヒトツ鬼にされた際は、蘇ったタロウの姿を見て元に戻る等、タロウに噛みつきつつもその凄味を認め、自身もそれについていこうと意地を見せつける「強さ」は持ち合わせている様子。(この時雉野だけが元に戻らなかった。)

作中で脳人のソノニと縁を結ぼうとして失敗しており、それ故に自分達の都合で同盟を結ぼうとする脳人に対する反意を募らせていたが、そういった人間臭い一面が「悪事」を働いてきた脳人達が、「正義」の為に刃を奮う為に超えるべき溝として機能したのはそれ相応に意味があったかなと思う所。

 

雉野つよし/キジブラザー

愛想笑いが我が人生的サラリーマン。才能に恵まれない為にこれといった特技が無い自分を恥じていたが、タロウは彼の一面を指して「似ているな。俺とお前は。」と断言。

自信が無い自分を変えようともがく反面、成果が出ずにいた所を愛妻のみほからの承認で自分を保ち続ける毎日を繰り返しており、その為みほを失うことを極度に恐れており、みほの都合よりも自分の都合を優先しようとする傲慢さを持っている。それはみほを排除しようとしたヒトツ鬼を脳人を利用して消去したり、みほ本人に軟禁状態を強いる等強烈無比。恋人関係になる過程でも、みほの勤め先に何度も足を運んでしつこくアプローチをするなど、ストーカー気質が見え隠れする。

みほに対するエゴイスティックな振る舞いは他者に対しても向けられることが目立ち、一見同じく「大切な存在」を探し求めて指名手配犯の汚名を被る犬塚翼の理念に協調する姿勢を見せつつも、その実自分と嫁の現在進行形の生活を、愛する人と離れ離れになった男に見せつけようとすることを厭わない嫌らしさに溢れた振る舞いであることから、他者を踏み台に自分を良く見せようとする傾向が強い。

そういった性格故に、普段は一見謙虚な態度で接するものの、一たび権力を手に入れたり、自分を追い落とそうとする存在と出遭った際には、例えそれがかつての自分と同じ境遇の存在、或いは友人であっても、一方的に見下したり追い落とそうとする等、その時々の気分で他者との接し方が大きく変わる。

終盤、みほとの離別を経験したことで、彼女との思い出を全て捨て去り、「ドンブラザーズとして他人を助けることで自分を救う」という決意を新たにする。己の欠落を埋める為に他者に依頼し、或いは不都合な存在を排撃しようとする精神面の薄暗さを克服したというよりは、みほを失ったことで生じた傷を、家庭とは別のコミュニティの中で癒し、第二の人生を歩もうとするある種の「逃避」の姿勢ばかりが強調され、身勝手な振る舞いに対する責任の観点では大分苦しい落としどころで終わった感のある彼ですが、何度挫けてもごまかしを繰り返して自分を保ち前を向き続ける、清濁ない交ぜになった性質は、嘘と真実というワードが何度も浮上した本作を象徴するような存在で、そういう何が何でもしぶとく生き続ける凡人の強みこそ、人間性の証明ということなのかも。

 

犬塚翼/イヌブラザー

公式HPにて「皮肉屋で、利己的で、他人を信用しない」と紹介されるが、実際はちょっとキザでかっこつけたがりのお人好しといった人物像。

本職は役者だが演技力は低い様子。料理の腕はプロ級。彼の芝居に関する思い入れはついぞ語られなかったが、キザな性格から考えると、ナルシスト故の自己顕示欲が強い印象。料理人はどうしても厨房に引っ込んで仕事をするだけにね。

愛する者を守る為に逃亡犯として生き続けてきただけに、他者の愛を守ることに人生の救いを見出せるというのは美しい反面、身を守る為、知らずにやってしまったとはいえ、間接的に獣人となった狭山を殺めてしまったことに対する認識があやふやなまま終わってしまったのは座りが悪い所。

長らくイヌとしての正体が不明で、メンバーと合流したのはドン44話以降。他のお供以上にタロウに対して対等かそれ以上の存在であるかの如く我の強さを見せつけて、彼に言動への配慮を心がけさせる等、他のメンバーとはちょっと血色の違う掛け合いが見られた。

 

桃谷ジロウ/ドンドラゴクウ/ドントラボルト

ドンブラザーズきっての問題児。

タロウの代わりとしての役目を持っていたためか、好戦的な性格の持ち主だったのが、村の人達(幻想)から認められる中で人懐っこい性格が浮上。

村の人達から否定されることなく育ったこともあってか、人懐っこさと同時に元々の好戦的な性格が改善されることなく、目的の為なら同じドンブラザーズでも「処刑」したり、他者の都合を顧みずに行動したりと、自己中心的な言動が垣間見える。

自分を肯定してくれる村人が幻想だったことを知り、二つの人格が統合して克服を果たすも、その過程があまりにも流れ作業的なこともあり、今一つ見せ場として機能しなかったのは残念。

統合後は落ち着いた性格になり、以前の様に場をかき乱すような事もなくなった。ドンブラザーズではソノイと並んで2番手的な立ち位置らしいが、タロウ脱退後は正式にドンの座を任せられる。なんだかんだでタロウの役目を引き継いでの最後の変身シーンはそこそこかっこよかったと思う。